アダム・ロジャーズ / Adam Rogers

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バイオグラフィー

1965年ニューヨーク生まれ。ドラマー/ピアニストの父親、オペラ歌手の母親のもとで育つ。11歳でギターを始め、ジミ・ヘンドリックスを聴いたことがきっかけで楽器にのめり込む。ジャズに興味をもったのは15歳頃だった。

ジャズ・ギターはバリー・ガルブレイス(Barry Galbraith)、ハワード・コリンズ(Howard Collins)、ジョン・スコフィールドに師事。一方でクラシック・ギターもマネス音楽大学でRobert Secrist、フレデリック・ハンド(Frederic Hand)に5年間師事していた。

90年代からデヴィッド・ビニーのジャズファンク・バンド、ロスト・トライブに参加し11年間活動、3枚のアルバムを残す。
またウォルター・ベッカー、ランディ・ブレッカー、ミンガス・ビッグ・バンドの作品やツアーにも参加し頭角を現す。特に90年代後半からは約5年間マイケル・ブレッカー・グループに在籍し、様々な影響を受ける。ブレッカーのラージアンサンブル作品『Wide Angles』(2003)では、唯一のコード楽器奏者として参加している。

00年代はデヴィッド・ビニー、クリス・ポッター、アレックス・シピアギンなど同世代、同時代のミュージシャンのバンドに相次いで参加。特にポッターのベースレスカルテット「アンダーグラウンド」グループは00年代以降のコンテンポラリー・ジャズシーンで大きな存在感を発揮する。

リーダー作の制作も開始し、2001年にクリスクロス・レーベルより『Art of The Invisible』でデビュー。1~3作目まではピアノやサックス奏者を迎えたオリジナル曲中心の作品を、2007年発表の『Time and the Infinite』から2作はギター・トリオによるスタンダード曲中心の作品をリリースする。

10年代はフィマ・エフロン(b)、ネイト・スミス(ds)を率いてファンク、ロック、ブルース志向のグループ「ダイス」をメインに活動している。

作品

リーダー作

2001 – Art of the Invisible
2002 – Allegory
2004 – Apparitions
2006 – Time and the Infinite
2008 – Sight
2017 – Dice

コラボレーション

ロスト・トライブ
1993 – Lost Tribe
1994 – Soulfish
1998 – Many Lifetimes

w.デヴィッド・ビニー
2015 – R&B

フォーク(FORQ)
2014 – Forq

発言

音楽観

様々な演奏スタイルを切り換えるのは難しくないかと聞かれて
いや、「切り換える」ものとは考えていないな。どんな状況であれ、僕はそれに合わせようとするだけさ。沢山のスタイルを真剣に聴いているからね。

クラシック・ギターの勉強をしたことで、演奏中に周りの音をしっかりと聴くことができるんだ。それは別のギターや異なったタイプのサウンドを扱う時も一緒だね。これが本当に面白いんだ。絶えず移り変わる状況の中で、自分の個性を発揮しようと挑戦するのは好きだ。プレイヤーが本当に自分のサウンドを確立していれば、どんなスタイルで弾こうがそれは成し遂げられると思う。
(2008, Tomajazz: No, I don’t think~no matter what you’re doing)

  • ピッキングのスタイルはジム・ホールやジョージ・ベンソンから影響をよく指摘されるが、誰かに影響を受けたというわけではない。ホーンやピアノのようなフレイズを出来るだけ長く持続させて弾くために、自然と今のような形になった。(2001.7, Jazz Life)

好きな音楽

Q: あなたはトライアドを連続して使い、ものすごくカッコいいアウト・フレイズを展開していきますね。
AR: 元々はハービー・ハンコックやキース・ジャレットなどのピアニストがよく使う手法なんだけれど、それをギターに置き換えて、自分なりに発展させている。アウト・フレイジングをクリエイトする場合、主にクロマティックとトライアドの2つのやり方があるけれど、トライアドの方がシンプルな性質上より明確にアウトを表現することができる。例えばCコードのところでG♭やEのトライアドを弾けば、それだけではっきりとアウトしたって分かるよね。そこがトライアドで外すことの面白さなんだ。後は、コルトレーンのダイアトニックで転調していく方法論なども参考にしている。例えば「ジャイアント・ステップス」なんかはそのコンセプトを曲にしたものだ。それから、無調性の音楽という意味では現代音楽もたくさん聴いた。
(2001.7, Jazz Life)

  • 普段聴く音楽はブルース系のギターやシンガーではマディ・ウォーターズやアルバート・キング。最近(2008年)熱中しているのは現代音楽家モートン・フェルドマン。ビリー・プレストンの『The Most Exciting Organ Ever』にも感銘を受けた。「彼の堂々としたサウンドと音のカラーは本当に素晴らしい」(Jazz Guitar Book vol.17)

影響源

  • ギタリストではパット・マルティーノ、ウェス・モンゴメリー、ジョージ・ベンソン。それ以外ではマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、チャーリー・パーカー、ハービー・ハンコック(2001.7, Jazz Life)
  • 最も影響を受けたギター・トリオはウェス・モンゴメリーのオルガン・トリオ。しかしそれ以上にピアノ・トリオに大きく影響を受けている。ビル・エヴァンス、バド・パウエル、ウィントン・ケリー、ハービー・ハンコック(マイルス・クインテットの時のピアノ・トリオ演奏)、70年代のキース・ジャレットなど。(2008, Tomajazz)

他のミュージシャンについて

マイケル・ブレッカーに対して
彼には本当に多くのことを教えてもらった。何よりも大事なことは、楽器を持ったら常に限界以上の力を出しきらないといけないことだ。マイケルは一度サックスを持ったらとんでもない厳しさと集中力で演奏していたけど、それは僕にとっていつも最高のレッスンだった。
彼と演奏したのは不定期も含めれば5,6年になる。僕は学んだんだ…。本当にね…。小さなことも含めれば膨大になる。だけど最も大きいことはそういう(常に全力を出しきる)ことだと思う。彼はそうやってインプロヴァイザーとして、サックス奏者としての力と能力を自分のサウンドにしたのだから。いつも衝突するような、ものすごい力強さだった。
(2008, Tomajazz: Oh God, that’s another interview~a better human being being around Michael.)

評価

石沢功治
筆者も最初に彼のプレイを目の当りにしたときの驚きは未だに忘れられない。まずピッキング。小さなピックで、余分な動きを一切排除したスピーディ且つ正確なヒッティングから発せられるフレーズは澱みが微塵もなく、最初はレガートで弾いているのかとさえ思ってしまった程である。

まるで連なる山脈のようにロング・フレーズで次々と繰り出されて来るときのスリリングさはピカ一。その驚異のピッキングに対応する手のフィンガリングは、今ではエレクトリック・プレイヤーとしては逆に珍しいクラシック・フォームを主体にした指使いが特徴。ギターを少しでも弾いたことがある人なら分かると思うが、押さえにくい4度音程なども軽々とこなす。端正なことこの上ないものだ。

ところで、たまにアダムをパット・メセニー的と評しているのを目にすることがあるが、ここではっきり言いたい。どこを聴いているのかと。フレーズの組み立て方、アーティキュレーションなど全てにおいて両者は異なるものだ。似ているとすればダークがかったクリーンな音色位である(これも違うのだが)。(Jazz Guitar Book vol.2)

出典

雑誌

(2001.7) Jazz Life by 石澤功治
(2004) Jazz Guitar Book vol.2 by 石澤功治
(2008) Jazz Guitar Book vol.17 by 石澤功治

ウェブサイト

(2008) Tomajazz by Arturo Mora
(2005) All About Jazz by David Miller
(2012) JazzTimes by Bill Milkowski
(2011) Jazz Guitar Scene by Dan Johnson

関連作品