アントニオ・サンチェスはメキシコ生まれ、アメリカ在住のドラマー、作曲家。
バイオグラフィー
1971年11月1日、メキシコ、ニュー・メキシコ・シティに生まれる。ロック好きの母親とジミ・ヘンドリックスやザ・ビートルズなど聴いて育つ。5歳からドラムを叩き始め、10代前半にはプロとして活動を始める。当初は地元のロックバンドで活動していた。
師事歴 | |||
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時期 | 学校・機関 | 教育家 | 主な内容 |
17-21歳 | メキシコ国立音楽院 | 不明 | クラシック・ピアノ |
21-25歳 | バークリー音楽大学 | 不明 | 不明 |
26-27歳 | ニューイングランド音楽院 | 不明 | ジャズ・インプロヴィゼーション |
17歳からメキシコ国立音楽院に4年半在籍し、その後1993年に全額支給奨学金を受けバークリー音楽大学に入学。卒業後、さらに1997年からニューイングランド音楽院に在籍する。
1999年からニューヨークに移り住み、パット・メセニー、ダニー・マッキャスリン、ミゲル・セノンのバンドなどで活躍する。
2007年にクリス・ポッターとダビィ・サンチェスの2テナーをフロントに据えた作品『Migration』でリーダー・デビュー。2010年にはポッターをミゲル・セノンに代えた前作の延長線上の作品『Live in New York』を発表する。
2011年からはより作曲性を強めたバンド「マイグレーション」での活動を開始し、2013年に第1作『New Life』、2015年に第2作『The Meridian Suite』を発表。
2014年、同郷の映画監督アレハンドロ・G・イニャリトゥの作品『バードマン』のフィルムスコアを担当し、映画音楽賞にノミネートされたことでジャズ以外の世界にもその名前が広く知られる。
- 祖父はメキシコで有名な映画俳優イグナシオ・ロペス・タルソ。
作品
リーダー作
アントニオ・サンチェス名義
2007 – Migration
2010 – Live in New York at Jazz Standard
2014 – Three Times Three
2017 – Bad Hombre
2018 – Channels of Energy
アントニオ・サンチェス&マイグレーション
2013 – New Life
2015 – The Meridian Suite
2018 – Lines in the Sand
サウンドトラック
2014 – Birdman
発言
音楽観
僕はソリストとは違う動きをするし、ソリストが音を出していないときに音を出す。最高の音楽は、対位法的で、メロディがあり、空間を活かし、ダイナミクスがある。ドラムでも、これらのすべてを表現できるんだ
リズム&ドラム・マガジン2013年9月号
ラテン音楽からの影響
Q: あなたのリズムのフィーリングには、スクエアなビートに、ラテン的な”訛り”が加わっているように感じます。ご自身では、スクエアなフィーリングと”訛り”のバランスをどのように捉えていますか?またそれはどのように培ったのでしょうか?
AS: 可能な限り音楽的なアプローチを取ろうとしてきただけだよ。あらゆるサウンドを利用してやってみたいと思っている。僕はウッディなサウンドが大好きだから、リムとヘッドの間を叩いたりすることもあるよ。ようすることによって少しウッディなフィールを得つつ、ヘッドの音も出すことができるから、単なるウッド・サウンドではなくてドラムらしい音も得られるんだ。
シンバルもレガート・サウンドと、ばらっとまばらにちったようなドライ・サウンドを組み合わせて使ってみることが好きだね。そのようにいろいろな要素を組み合わせて、その両者のバランスをとりながらプレイするのが好きなんだ。(2007. 10, ジャズ・ライフ)
コードチェンジについて
Q: 新作にはパットがライナー・ノーツを寄せていて、あなたのドラミングは、ドラムだけを聴いてもコードを感じさせると書いていますが、そういった意識はあるんでしょうか?
AS: もちろんだよ。コードチェンジを感じさせる演奏をするというのは、ドラマーの責任だと思う。(略)コードが変われば色彩感も変わるわけで、それに合わせてハーモニー感のあるリズムが重要になってくる。(略)音楽に句点や読点を打つのがドラムの大切な役割で、コード・チェンジのタイミングは、どこで句読点を打つべきか、どこで色彩感を変えるべきかを判断する手がかりになるんだ。
僕が3枚のライド・シンバルを使い分けているのも、セクションごとにサウンドを微妙に変えたり大きく変えたりするためで、スペースに余裕があれば、ライドを7枚セットすると思う。ライドは最も多彩なサウンドが出せるシンバルで、多く使えばそれだけ選択肢が広がるからね。このバンド[マイグレーション]でも、曲の冒頭ではフラット・ライドを使うことが多くて、ブリッジには別のライド、ソロでは第3のライド、というふうに使い分けている。
観客は聴いても違いが分からないかもしれないけれど、無意識に違いを感じ取っているはずなんだ。(略)僕はそうやって色彩にコントラストを付けるのが好きだし、そうするのがドラマーの責任だと思っている。(2013.9, リズム&ドラム・マガジン)
好きな音楽
好きな音楽家・作品 | |||
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時期 | ジャンル | 音楽家・作品 | 出典 |
10代 | ロック | ビートルズ、ローリング・ストーンズ、クリーム、フー、ジミ・ヘンドリックス、サンタナ、ラッシュ、ポリス、レッド・ツェッペリン | 2013.9, リズム&ドラム・マガジン |
フュージョン | マハヴィシュヌ・オーケストラ、ウェザー・リポート、チック・コリア・エレクトリックバンド、ジョン・スコフィールド、アラン・ホールズワース、パット・メセニー・グループ他 | ||
ジャズ | マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、マックス・ローチ、エルヴィン・ジョーンズ、ジャック・デジョネット、トニー・ウィリアムス、ロイ・ヘインズ、キース・ジャレット、パット・メセニー、マイケル・ブレッカー、チック・コリア | ||
2010年代 | ジャズ以外のポピュラーミュージック | ハイエイタス・カイヨーテ、ブラザー・アリ、ビビオ、ヴェネチアン・スネアズ、ドム | 2015.6, CDジャーナル |
影響源
準備中
評価
メインの活動とも言えるパット・メセニーとの共演に加え、自身のバンドを率いてのソロ・アルバムの制作も精力的に行うサンチェスのプレイは、もともとの特徴であるラテン・ドラミングとジャズ・プレイとの融合がより高次元で進んでいる印象。
さまざまなリズムに対応したタイトな高速プレイの安定感はやはりラテン系の影響が強く感じられるが、手数の多いプレイの中においても切迫感の少ない空間の作り方は超一流。この”緊張と緩和”の絶妙なバランス感が彼のプレイのポイントと言えるだろう。端正で無理のないタッチは美しいサウンドの源で、まさに現代の”ドラマーズ・ドラマー”と言った感じ。
リズム&ドラム・マガジン2013年9月号
出典
雑誌
(2007.10) ジャズ・ライフ by 坂本信
(2007.10) リズム&ドラム・マガジン
(2013.9) リズム&ドラム・マガジン
(2015.6) CDジャーナル by 柳樂光隆