厳密に作曲された曲と、メンバーを自然体にさせることの間にあるグッド・バランスを見つけ出したい。僕の経験では、良い音楽はメンバーが本当に開放させている時にこそ生み出されるんだ。
ジョン・エスクリートはイギリス出身、アメリカ在住のピアニスト、キーボーディスト、作曲家。コンテンポラリー・ジャズとフリー・インプロヴィゼーションの分野で注目を集めている。
バイオグラフィー
1984年8月18日、イギリスのドンカスターに生まれる。トイピアノで遊んでいたことがきっかけで4歳からピアノレッスンを開始。テレビのライヴショーを観てミュージシャンに憧れ、小学生の時は地元のビッグバンドで演奏していた。最初に手に入れたジャズ・アルバムはハービー・ハンコック『The New Standard』だった。
14歳になると全寮制の音楽学校に入学するために地元を離れる。卒業後、ロンドンの音楽学校に入るが、ニューヨークに行く必要性を自覚し、2006年に渡米。マンハッタン音楽院に入り、ケニー・バロン、ジェイソン・モランに師事。デヴィッド・ビニーのレギュラーグループと彼のビッグバンドに参加し、キャリアを本格的にスタートさせる。
2008年に『Consequences』でデビュー。エレクトロニック・ミュージック、ロック、フリー・ジャズの要素も含んだ硬質/高密度なコンテンポラリー・ジャズを展開する。その後、初リーダー作の延長線上の作品を短期間に立て続けに発表(2010年『Don’t Fight the Inevitable』→2011年『The Age We Live In』→2011年『Exception to the Rule』)。この路線は、編成をストリングス、ブラス、ヴォーカルセクションまで拡大した2013年『Sabotage and Celebration』で完成を見る。これら初期の5作にはいずれもデヴィッド・ビニーが参加し、エレクトロニクスやプロデューサーとして貢献している。その他にはアルバムによってバラツキはあるが、アンブローズ・アキンムシーレ、ウェイン・クランツ、タイショーン・ソーリー、マーカス・ギルモア、ナシート・ウェイツなどが参加している。
その1年後、2014年からはソーリー、ジョン・エイベアのピアノトリオにエヴァン・パーカーを迎えたフリー・インプロヴィゼーション作品『Sound, Space and Structures』、『The Unknown』を発表。同時によりモダン/コンテンポラリー寄りのレギュラーバンドを運営しながら現在にいたる。
- サイドマンとしてはアントニオ・サンチェス・マイグレーションやデヴィッド・ビニー、アレックス・シピアギンなどの作品に参加している。
- 好きなベニューは55バーとジャズギャラリー(2009, All About Jazz)。
作品
リーダー作
2008 – Consequences
2010 – Don’t Fight the Inevitable
2011 – The Age We Live In
2011 – Exception to the Rule
2013 – Sabotage and Celebration
2014 – Sound, Space and Structures
2016 – The Unknown
2018 – Learn to Live
発言
音楽観
『The Age We Live In』について
音楽は複雑なものでコンポーザーは[演奏家をがんじがらめにしてしまうほど]何もかも作曲しがちだけど、僕はグループそれぞれのメンバーがありのままでいられるように多くのスペースを提供し、そこで思う存分に演奏してほしいんだ。厳密に作曲された曲と、メンバーを自然体にさせることの間にあるグッド・バランスを見つけ出したい。僕の経験では、良い音楽はメンバーが本当に開放させている時にこそ生み出されるんだ。
(略)また、僕とデヴィッド・ビニーはポスト・プロダクションにとても骨を折った。このレコーディングではデイヴに本当に世話になったんだよ。僕たちは実際のレコーディングよりも、その後の工程に本当に苦心した。ストリングスをオーバーダブし、ブラスをオーバーダブし、バッキング・ヴォーカルをオーバーダブした。この手のもの全てをね。パーカッションも重ねたよ。僕たちはポスト・プロダクションに多くの時間を注いだ。これこそが今学んでいることの中で、本当に興味のあったことなんだ。とても効果的でクリエイティヴなことさ。私見では、今日のジャズ・ミュージシャンは充分にこの分野を突き詰めていないと思うんだ。(Even though the music…that enough, in my opinion.)
好きな音楽
好きな音楽 | |||
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時期 | ジャンル | 音楽家・作品 | 出典 |
2009年 | ジャズ | アンドリュー・ヒル 『Change』 デヴィッド・ビニー 『Third Occasion』 グレッグ・オズビー 『Nine Levels』 ジェラルド・クリーヴァー/クレイグ・テイボーン/ウィリアム・パーカー 『Farmers By Nature』 |
2009, All About Jazz |
- 2009年時点での無人島アルバムはリー・コニッツ『Motion』、マイルズ・デイヴィス『Complete Live at the Plugged Nickel』、アンニャ・ガルバレク『Smiling and Waving』、グレン・グールド『Goldberg Variations (1981)』(2009, All About Jazz)
影響源
- ピアニストの影響源は、10代半ばからはキース・ジャレット、ハービー・ハンコック、チック・コリア、大学進学後の18歳以降はポール・ブレイ、セシル・テイラー、ジェイソン・モランが主体。その他にはアンドリュー・ヒル、クレイグ・テイボーン、ヴィジェイ・アイヤー、アーロン・パークスからも影響を受けている。(2009 & 2011, All About Jazz)
- 作曲面ではエレクトロニカからフライング・ロータス、クラシックからオリヴィエ・メシアンを挙げている。「僕の音楽は20世紀クラシックではないし、そこからは遠いけれど、直接的な影響はいくつか受けている。インターバルとハーモニーという点でね。作曲の影響は、聴いてきた音楽のあらゆるところから受けている。」(2011, All About Jazz)
出典
ウェブサイト
(2009) All About Jazz by AAJ STAFF
(2011) All About Jazz by R.J. DeLuke
(2014) Jazz Speaks by Andrew Chow