ダニー・グリセットはオーストリア在住、主にニューヨークで活動するジャズ・ピアニスト、作曲家。クラシック・ピアノ出身らしい流麗なタイム感やタッチ、バリー・ハリスやハービー・ハンコックを消化したメロディ、ハーモニックセンスをあわせ持ち、派手さはないものの充実した作品をデビュー以来発表し続けている。サイドマンとしてもトム・ハレルやラーゲ・ルンドなどモダン/コンテンポラリー系のジャズミュージシャンに起用されることが多い。
バイオグラフィー
1975年3月20日アメリカ、カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。5歳からピアノを始め、大学卒業までクラシック・ピアノを練習する。
高校時代からジャズへの憧れがめばえ、音楽教師の紹介で地元のミュージシャンと面識を得てジャズレコードを聴かせてもらっていた。大学卒業後、ケイ赤城に師事しジャズの世界に本格的に転向する。大学院生時代は2年間毎日何時間もジャズ・ピアノの練習を行い、マイルズ・デイヴィス、オスカー・ピーターソン、ウィントン・ケリー、ハービー・ハンコック、バド・パウエルなどの影響を受ける。
その後、セロニアス・モンク・インスティチュート入学のためのオーディションを受験。一度は不合格になるが再度のオーディションをパスし、モンク・インスティチュートでバリー・ハリスを中心に様々なジャズピアニストに師事する。また、ロサンゼルスのカルチャーセンター、「ワールドステージ」でその設立者ビリー・ヒギンズのワークショップやグループに参加し腕を磨く。ヒギンズのカルテットではジョージ・コールマン、ジャッキー・マクリーン、ハロルド・ランドなどと共演する。2001年からの3年間は、ピアノトリオを率いてカリフォルニアのジャズシーンで活動していた。
師事歴 | |||
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時期 | 学校 | 教育家 | 主な内容 |
高校時代 | – | Ralph Jones | ジャズレコードの紹介 |
1994-98年 | カリフォルニア州立大学 ドミンゲスヒルズ |
James Newton 他 | クラシック、音楽教育学 |
1998-00年 | カリフォルニア芸術大学 | 不明 | ジャズ、美術学 |
プライベート・レッスン | ケイ赤城 | ジャズ和声 | |
2000-01年 | セロニアス・モンク・インスティチュート | バリー・ハリス ケニー・バロン ビリー・チャイルズ |
ジャズピアノ |
2003年頃、コロラド州のジャズキャンプで知り合ったマーカス・ストリックランド、E.J.ストリックランド、ジェイソン・パーマーらに触発され、ニューヨークへの移住を決意。同年秋、4ヶ月分の生活費だけを持ってロサンゼルスを離れる。
ニューヨークでは、最初にブルックリンのアップ・オーバー・ジャズカフェでヴィンセント・ハーリングが主催するジャムセッションに参加する。当時そこではケンドリック・スコット、ストリックランド兄弟、ワイクリフ・ゴードンらと演奏していた。参加から程なくしてハーリングに起用され、ニューヨーク・シーンでの評価を高めていく。その後は00年代半ばから後半にかけてニコラス・ペイトン、トム・ハレル、ジェレミー・ペルトのバンドに在籍する。
自身のグループではヴァンガード・ヴィレッジ、ファットキャット、スモールズに出演。2005年、クリスクロス・レーベルのオーナーに声をかけられファーストアルバム『Promise』のレコーディングを行う。それ以来ベーシストをヴィセンテ・アーチャーに固定し、ドラマーはケンドリック・スコット(『Promise』、『Encounters』、『Form』)、マーカス・ギルモア(『Stride』)、ビル・スチュワート(『The In-Between』、『Remembrance』)を起用してコンスタントにアルバムを制作している。
- 配偶者はオーストラリア人。2013年頃から妻子とともにウィーンに住み、ジャズ・ピアニストとしての活動は主にニューヨークでするという生活を送っている。
- 教育者としてはニュースクール大学、イーストマン音楽大学、ウィーンのJam Music Lab Universityに務めた経験がある。
作品
リーダー作
2006 – Promise
2008 – Encounters
2009 – Form
2011 – Stride
2015 – The In-Between
2017 – Remembrance
発言
影響源
ジャズの練習を始めた当時インパクトを与えたのはマイルズ・デイヴィス。他にもオスカー・ピーターソン、ウィントン・ケリー、ハービー・ハンコック、バド・パウエルを影響源に挙げている。(2017, Jazz Hot)
他のミュージシャンについて
バリー・ハリスについて
ハーモニーとメロディについてとても深い知識を持っているバリー・ハリスに触発された。彼のハーモニック・リファレンスは非常に特別なんだ。それは、私にこれこそがジャズのイディオムなのだというを教えてくれた。
(2017, Jazz Hot; Barry Harris impressed me…this idiom that is jazz.)
マルグリュー・ミラーについて
彼が演奏している時、ミラーはピアノの歴史をカバーし、その上非常にパーソナルな自身のスタイルも持っていた。これは稀なことだよ。また彼は偉大なコンポーザーでもあった。
(2017, Jazz Hot; When he was playing…also a great composer.)
出典
ウェブサイト
(2017) Jazz Hot by Mathieu Perez