ラフィーク・バーティア / Rafiq Bhatia

シェアする

ラフィーク・バーティアはアメリカ在住のギタリスト、作曲家。ニューヨークのアヴァンギャルド・ジャズ/Mベースシーン周辺のギタリストとインディーロック・バンド、サン・ラックスのギタリストとしての顔をあわせ持つ。様々なテクスチャを重ねたり、即興と作曲をお互いに組み合わせるようなスタジオ・プロダクションに関しても造詣が深い。

ラフィーク・バーティア 作品インタビュー|スタジオ・コンポジションの鬼才、最新作を語る

バイオグラフィー

デビューまで

1987年8月21日ノースカロライナ州ヒッコリー生まれ、同州ローリーで育つ。両親・祖父母は1960-70年代の東アフリカ諸国の独立と、それをきっかけに起こったアジア人追放令で祖国を脱出してきたインド系アフリカ人のディアスポラだった(参考)。

小学校の時、祖父のムスリム歌曲とラジオから流れてくるギャングスタ・ラップを聴いているうちに音楽に興味を持つ(2018, TIDAL Read)。当初はヴァイオリンを学んでいたが、高校生でギターに切り替える。最初のあこがれはジミ・ヘンドリックス、ジョン・コルトレーン、マッドリブだった。

高校卒業後、正式に音楽を学ぶためにニューヨーク大学に入学。しかし大学のプログラムとニューヨークという都市に閉塞感を抱き、大学を移籍(2013, Washington Post)。オハイオ州のオーバリン大学に入り、経済学と神経科学を専攻する。しかし音楽への情熱は消えず、大学では時間があればドラマー、ビリー・ハートの行うドラマー向け講義にもぐり込んでいた(2012, Jazz Speaks)。ハートからはアフリカ系アメリカ人ドラマーの伝統的なドラミング・アイディアについて示唆を受ける。

ニューヨーク進出

学位取得後、2010年にニューヨークに戻りブルックリンに住む。すぐさまジャズ・ギャラリーなどで活動を開始し、2012年には当時のカルテットによる『Strata』(EP)とファーストアルバム『Yes It Will』をレコーディング。『Yes It Will』では恩師のビリー・ハート、影響源の一人であるヴィジェイ・アイヤー、プロデューサーのヴァルゲイル・シグルズソン(ビョーク、トム・ヨーク)が参加した。

2014年、ライアン・ロット率いるインディーロック・バンド、サン・ラックスに加入。現在まで2枚のアルバムを制作している。また、ダビィ・ビレージェス(ジャズ)、ヒームス(ヒップホップ)、スフィアン・スティーヴンズ(SSW)など様々なジャンルのミュージシャンのアルバムやツアーに参加するようになる。

2018年サン・ラックスの同僚イアン・チャン(ドラム)とブルックリン進出以来の仲間ジャクソン・ヒル(ベース)とのレギュラートリオに、ゲストメンバーを加えてセカンドアルバム『Breaking English』を発表。バーティアにとって初のセルフ・プロデュース作品になる。

作品

リーダー作

2013 – Strata
2013 – Yes It Will
2018 – Breaking English

発言

音楽観

黒人音楽、ダンス・ミュージックからの影響

ビリー・ハートのレッスンでは、「アフリカ系アメリカ人の[ダンス・ミュージック由来の]伝統的なドラミングは、20世紀の最初の50年で抽象化された」という発想に惹きつけられた。マックス・ローチ、トニー・ウィリアムズ、エルヴィン・ジョーンズの流動的かつ高度にインタラクティヴなスタイルは、彼らに先立ってダンス・ミュージックを演奏していた当時の[アフリカ系アメリカ人の]ドラマーのイノベーションの延長線上にあると言える。

このコンセプトは腑に落ちた。僕は90年代半ばのヒップホップを聴いて音楽に夢中になったんだ。それ以来ずっと熱心に聴いていて、マッドリブ、ダブリー/Dabrye、フライング・ロータス、サムアイアム、ジェイムズ・ブレイク、ジェレミア・ジャエ/Jeremiah Jaeのようなプロデューサーのレコードをヘビー・ローテーションしてきた。

彼らのビートには共通項があるような気がする。これらのビートは僕らの知的好奇心をかき立てるけど、それにより踊れなくなることは無い/challenge the mind but not the body。 リスニング中、僕の耳/my mindは細かいリズムの分割とバリエーションに注意を向けているけど、計算したり解析したりまではやらないんだ。 その一方で[踊るように]自然と頭を振り、フレーズの最初にゆっくりと頭を持ち上げ、次には思い切り頭を振り降ろす。僕の音楽は、こうした原則を構成要素に持つインプロヴァイズド・ミュージックだと思っている。ヒップホップのプロデューサーが使っているインターフェイスと時間を過ごすことによって、こうしたリズミックな方向性を発展させる方法を沢山学べることは、別に驚くことじゃ無い。

もう1つのカギはサンプリングの中に含まれている。これはアーマッド・ジャマル、ハービー・ハンコック、スタンリー・カウエルがとても頻繁にサンプリングされていることの理由だ。こうした[ダンス・ミュージックをルーツに持つ音楽の]同じような研究は、僕の最近の音楽に大きな影響を与えたんだ。(2012, Jazz Speaks: Those lessons really…on my recent music.)

スタジオ・コンポジションについて

僕はスタジオ・プロダクションの持つオーケストレーション的な可能性について、とても大きな関心を抱いてきた。新しい響きを生むテクニックとして、様々な楽器の組み合わせによるサウンドのミックスは[クラシックなどの世界で]何世紀も前から行われてきた。

近年、ティム・ハッカー、ベン・フロスト、ヴァルゲイル・シグルズソン、オーレン・アンバーチのようなプロデューサーが、そうしたアイデアをさらに更新させて現実にはありえないような/hyper-realities響きを作り出している。それは、アコースティックな録音が非常にディテールに富んだエレクトロ・アコースティックな加工によって、さらに素晴らしくなるということだ。

また、スタジオを作曲ツールとして使うことは、「即興」と「作曲」を新しい方法でブレンドする機会を提供してくれる。僕がライヴで演奏する多くの楽曲は、スタジオ・コンポジションの過程を通して形作られたんだ。それはプロデューサーのアレクサンダー・オヴァリントン*1と僕が次の2つのアルバム、『Strata』と『Yes It Will』で採用している方法だ。

最初に、僕たちはそれぞれの曲をインプロヴァイジング・アンサンブルで録音し、それからオーバーダブと音響処理/processingのレイヤーの中で、録音したインプロヴィゼーションを再構築した。僕たちのライヴ・パフォーマンスは、これらのプロダクション要素をだんだんと盛り込むようになった。僕たちは録音プロセスを通して発見した響きを[ライヴで]実現するために、サンプリングとリアルタイムの音響処理を組み合わせているんだ。(2012, Jazz Speaks: I’ve also been paying…the recording process.)

好きな音楽

2012, Jazz Timesのインタビュー
ダブステップ、ミニマル音楽、ドゥームメタル、フライング・ロータス、マイルズ・デイヴィス、アンドリュー・ヒル

好きなアヴァンギャルド・ジャズアルバム5選 (2018, selftitledmag)
ジョン・コルトレーン『Stellar Regions』(1995)
アリス・コルトレーン『Journey In Satchidananda』(1971)
オーネット・コールマン『Science Fiction』(1972)
ヴィジェイ・アイヤー『Reimagining』(2005)
オッキュン・リー『Ghil』(2013)

影響源

人生を変えたアルバム5選 (2018, TIDAL Read)
インド映画『Hum Aapke Hain Kaun』サウンドトラック
ジミ・ヘンドリックス『Live at the Fillmore East』(1969)
マッドリブ『The Further Adventures of Lord Quas』(2005)
ヴィジェイ・アイヤー『Reimagining』(2005)
ベン・フロスト『By the Throat』(2009)

出典

ウェブサイト

(2012) Jazz Speaks by Rafiq
(2012) Jazz Times by Giovanni Russonello
(2013) Washington Post by Chris Richards
(2018) selftitledmag by Rafiq Bhatia
(2018) TIDAL Read by Brenna Ehrlich

関連作品

  1. Alexander Overington。ベン・フロスト、ヴァルゲイル・シグルズソン、ダビィ・ビレージェス、サンラックス作品のアレンジャー/エンジニア。