エリック・ハーランド / Eric Harland

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エリック・ハーランドはアメリカ在住のドラマー、作曲家。トラディショナルなスウィングからヒップホップやドラムンベース的なビートまで叩きこなし、世代やスタイルを問わず様々なアーティストに起用されている。インタープレイの圧倒的な反射速度、プリペアード処理をしたハイピッチなドラム・サウンドが特徴。音楽家としてはサックス/ギター・クインテット「ヴォイジャー」のリーダーや、ジョシュア・レッドマン、アーロン・パークス、マット・ペンマンとの連名グループ「ジェイムズ・ファーム」のメンバーとして活動している。

バイオグラフィー

1978年11月8日テキサス州ヒューストンに生まれる。5歳頃からドラムのレッスンを初め、母親もオルガニストとして在籍するゴスペル聖歌隊で演奏するようになる。また13歳頃からジャズ・ドラムを初め、15歳からプロとしてのキャリアを開始する。

高校はヒューストン・ハイスクール・フォー・ザ・パフォーミング・アンド・アーツ/HSPVAに入学。高校には同年齢にマイク・モレノとロバート・グラスパーが、3歳年上にジェイソン・モランが、2歳年下にケンドリック・スコット、ウォルター・スミス3世がいた。1996年卒業後、高校のワークショップで出会ったウィントン・マーサリスの勧めでニューヨークのマンハッタン音楽大学に奨学生として入学する。しかし入学後すぐに体調を崩したため、退学し帰郷。地元のヒューストン・バプティスト大学に入学し神学を勉強する。

バプティスト大学卒業後、再びニューヨークに行き、グレッグ・オズビー、テレンス・ブランチャード、ジョー・ヘンダーソン、ベティ・カーターなどのグループに参加する。特にベティ・カーターのグループは1998年に彼女が亡くなるまで在籍した。

00年代以降も活動の幅を広げ続け、世代の近いミュージシャンとの活動ではアーロン・ゴールドバーグ、カート・ローゼンウィンケル、ジェイムズ・ファームなど、ベテラン世代との活動ではチャールズ・ロイド、デイヴ・ホランドのグループなどで活躍する。

2011年からは自己のグループ「ヴォイジャー」を結成し作品制作も開始する。バンドメンバーはウォルター・スミス3世、テイラー・エイグスティ、ジュリアン・ラージ、ハリッシュ・ラガヴァンの5人が基本になっている。

作品

リーダー作

2011 – Voyager: Live By Night
2014 – Vipassana
2018 – On the 13th Floor

コラボレーション

ジェイムズ・ファーム
2011 –James Farm
2014 –City Folk

サイドマン作品

発言

音楽観

セットアップについて
タムの上にシンバルを乗せて叩いたり、ハイハットにタンバリンを乗せてリズムを刻んだりと様々な音色を使うのは、R&B、ヒップホップ、ジャズ、ロック、ラテン、ブラジル音楽などがそれぞれ持っている独自のサウンドを自分のキットで表現するため。

タンバリンはブラジル音楽とヒップホップ、カウベルはラテン音楽、(フロアタムの代わりに)2つ並べたスネアはトライバルなアフリカン・サウンドからの影響。シンバルをタムの上に置いて”チカッチカッ”という音を出すのはドラムンベースの影響。またシンバルを重ねるのは、ドライなシンバル・サウンドを表現するため。(2012.8, Rhythm & Drums Magazine)

好きな音楽

準備中

影響源

影響を受けたドラマーは、革新的、ユニークなドラマーとしてエルヴィン・ジョーンズ、ジャック・ディジョネット、ロイ・ヘインズ、トニー・ウィリアムズ。素晴らしいテクニックの持ち主としてデニス・チェンバース、デイヴ・ウェックル、神保彰、ザキール・フセイン。ドラマー以外ではジョン・コルトレーン(コルトレーンのプレイした音符やパターンをドラムに応用している)。(2008.6, Rhythm & Drums Magazine)

シンバルの使い方で影響を受けたドラマーはトニー・ウィリアムズ、エルヴィン・ジョーンズ、ロイ・ヘインズ。四肢の独立性という点ではそれらに加えて、アート・ブレイキー。ドラム・サウンドのアイディアはエレクトロニック・ミュージックやヒップホップのDJからも影響を受けている。(2015.03, Rhythm & Drums Magazine)

  • 10代の頃はエルヴィン・ジョーンズやジェフ・ワッツ、ジャック・ディジョネット、デイヴ・ウェックル、スティーヴ・ガッドの演奏しているレコードと一緒にドラムを叩いていた。

評価

大坂昌彦

エリックはスウィングからイーヴン、ファンクまで非常にバランス良く叩きこなす、現在最も求められるジャズ・ドラマー。高速シングル・ストロークの流麗さもさることながら、ソロ・プレイヤーや状況に的確に素早く反応できる音楽性こそ、彼の最大の武器だ。ダイナミクスも非常に幅広く、ピアニシモのコントロールが速いフレージングでも活かされるのが素晴らしい。マッチド・グリップでハイピッチのチューニングなので、どんな複雑なことをやってもかなりすっきりした印象。これがまた音楽の自由度を上げているようだ。特に最近はスネアやフロアにプリペアード処理をしているので、不要な倍音がまったくない。これは基本的に倍音をありがたがるジャズ・ドラマーにとってはコロンブスの卵で、James Farmのような伝統的スウィングがほとんどないグループでは何の違和感もなく、彼の高速フレーズが実に映える。(2012.8, Rhythm & Drums Magazine)

出典

雑誌

(2008.6) Rhythm & Drums Magazine
(2012.8) Rhythm & Drums Magazine
(2015.3) Rhythm & Drums Magazine by Akira Sakamoto

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