マシュー・スティーヴンスはカナダ出身、アメリカを中心に活動するギタリスト、作曲家。00年代半ばよりクリスチャン・スコットやエスペランサ・スポルディングのバンドで、ロックから伝統的なジャズまで対応する幅広いギタースタイルで活躍。自身の作品では影響を公言するボン・イヴェールやダニエル・ラノワに通じるインディー・ロック、ポストロック的なサウンドを構築している。特に2作目の『Peverbal』では、サンプリングやオーバーダブと生演奏を高いレベルで融合させており、スタジオ・プロダクションの観点からも充実した内容になっている。
バイオグラフィー
1982年1月8日カナダ、トロントに生まれる。母はトロントのナショナル・バレエ・スクールの教師、父はアマチュアのギタリストで、小さい頃から音楽に囲まれて育つ。また友人の母親からもピアノレッスンを受ける。
ジミ・ヘンドリックスやスティーヴィー・レイ・ヴォーンなどロック・ギタリストを通じて即興演奏を知り、その後友人からの影響もあってジャズを聴き始める。地元の芸術高校卒業後、スカラーシップを受けバークリー音楽大学に進学する。
師事歴 | |||
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時期 | 学校・機関 | 教育家 | 主な内容 |
20代前半 | バークリー音楽大学 | ジョー・ロヴァーノ、パット・メセニー、ミック・グッドリック、ウェイン・クランツ、デヴィッド・サミュエルズ、ハル・クルック | 不明(2014, Berklee) |
卒業後はNYに進出し、大学時代に知り合ったクリスチャン・スコットのグループを中心に活動する。『Rewind That』(2006)から『Christian aTunde Adjuah』(2012)までのスコットの初期の作品全てに参加。またジェラルド・クレイトンやローガン・リチャードソン、ウォルター・スミス三世らと共に、共同グループ、ネクスト・コレクティヴを結成する。
クリスチャン・スコット・グループを退団した2014年頃から本格的にバンド活動を開始。ヴィセンテ・アーチャー(b)、エリック・ドゥーブ(ds)とのトリオを中心としたグループで、現在まで2枚のアルバムをリリースしている。特に2作目の『Peverbal』はドラマーと録音したデモテープをレコーディング・スタジオで再構築・昇華するという手法で制作され、スタジオ・プロダクションの観点からも充実した内容になっている。
- 2010年代からニュースクール大学の講師を務めている。
- 2010年にはウォルター・スミス三世、ジョン・エスクリート、ジャマイア・ウィリアムスを起用して『Emergence』を録音する。しかし発表には至らず、結果的に幻の初リーダー作になってしまっている(2014, NPR)。
作品
リリース年 | タイトル | レーベル | レビュー |
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2015 | Woodwork | Whirlwind | |
2017 | Peverbal | Ropeadope | 岡田・花木 |
発言
好きな音楽
2015?年Brooklyn Radioのインタビューでは、ダニエル・ラノワ(及びブラック・ダブ作品)、ボン・イヴェール、ザ・スターズ*1、ケンドリック・ラマーを、2017年Revive Musicのインタビューではニルヴァーナ、サウンドガーデン挙げている。
好きな音楽家・作品 | |||
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時期 | ジャンル | 音楽家・作品 | 出典 |
10代 | ロック | ジミ・ヘンドリックス、スティーヴィー・レイ・ヴォーン | 2015?, Brooklyn Radio |
ジャズ | ジム・ホール、グラント・グリーン、ジョン・スコフィールド、パット・メセニー、ビル・フリゼール | ||
トロント周辺のジャズギタリスト | Ed Bickert、Lennie Breau、Lorne Lofsky、Rob Piltch、Reg Schwager | 2017, FYIMusicNews | |
グランジ | カート・コバーン(ニルヴァーナ)、キム・セイル(サウンドガーデン)、ストーン・ゴッサード、マイク・マクレディ(パールジャム) | 2015?, Brooklyn Radio | |
2010年代 | ポップミュージック | ダニエル・ラノワ、ボン・イヴェール、スターズ、ケンドリック・ラマー | |
2010年代 | エレクトロニック・ミュージック、アンビエント・ミュージック | 不明 | 2015?, Brooklyn Radio 2017, Revive Music |
影響源
ダニエル・ラノワ
僕が本当にいつも憧れている人はプロデューサー/ミュージシャンのダニエル・ラノワだ。彼は僕と同じカナダ人。彼のエレクトロニクスをアナログでオーガニックに使う方法には、美しさとうすら寒さを覚える。エレクトロニクスの扱い方は、単に何か(リズムやメロディ)の上に置くのではなく、まるで他の楽器と同じように音楽の一部として聴こえるんだ。それはまさに(『Preverbal』を作る上での)僕達の目標であり、実際にやったことだ。僕たちはただ曲をレコーディングするだけにならないよう十分注意した。無造作にエレクトロニクスを配置したり、既存の曲の上にかぶせたりした。それらはまるで最初からそうなっていたように。それが僕達の考えていたことだったんだ。(2017, Revive Music: Someone whose music…we were coming from.)
他のミュージシャンについて
エスペランサ・スポルディング
彼女が私をバンドに起用したのは、お互いに音楽の趣向が似ているからだと思う。(略)私はアーティストとして、ミュージシャンとして、言い表せないほどの大きなリスペクトを抱いているから、その彼女が自ら参加を申し出てくれたことを誇りに思う。(エスペランサのバンドでの演奏がアルバムに影響しているかと聞かれて)私は常に変化し続けたいと思っている。そして、エスペランサの”エミリーズ・D+エヴォルーション”に参加したことによって、自分の中にある別の側面を呼び起こされ、より創造的な世界へ解き放してくれたことは確かだね。(2017 Jazz Life)
出典
雑誌
(2017.06) Jazz Life by 石沢功治
ウェブサイト
(2014) NPR by Lara Pellegrinelli
(2015?) Brooklyn Radio
(2017) Revive Music by Paul Naser