カート・ローゼンウィンケル / Kurt Rosenwinkel

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僕の個性を確立する上で助けになったのは、いつも作曲をしていたことだ。作曲は僕のスタイルを明確にしてくれた。作曲する時にプランのようなものはない。曲が勝手に出てきて、あるべき形になるだけなんだ。(Berklee Today)

カート・ローゼンウィンケルはアメリカ出身、ドイツ・ベルリン在住のギタリスト、マルチ・インストゥルメンタル奏者、作曲家、レーベルオーナー。管楽器やシンガーを彷彿とさせるアーティキュレーション、歌えるメロディと複雑なコード進行やリズムを組み合わせたオリジナル曲、先進的なリズム・デベロップメントやハーモニー解釈などが魅力(自らのヴォイスをエフェクターのようにギターの音とブレンドさせる奏法も特徴的)。伝統と革新を組み合わせたスタイルで後継世代への影響力も非常に大きい。

All About カート・ローゼンウィンケル / "伝統か革新か"を超えて

バイオグラフィー

生い立ち

1970年10月28日ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。父はドイツ出身、母はノルウェー出身で、両親ともピアノをたしなむ家庭で育つ。9歳の時カートもピアノのレッスンを始め、すぐに自己流で曲を作って遊ぶようになる。その後12歳の時にギターを手にする。

高校は芸術系のフィラデルフィアCPA高校*1に進学。同級生にはクリスチャン・マクブライドやクエストラヴがいた。当時は地元のクラブのジャム・セッションでオールドスクールのビバップ奏者たちと腕を磨いたり、親友の自宅のガレージ・スタジオで膨大な音楽を宅録して音楽漬けの日々を送る。

卒業後、ボストンのバークリー音楽大学に入学。バークリーでは講義に出席せず、ひたすらセッションに明け暮れる日々を過ごす。同輩にはマーク・ターナー、シェイマス・ブレイク、クリス・チーク、ホルヘ・ロッシー、ギジェルモ・クレイン、ジェフ・パーカーなどがいた。彼らの多くは、90年代にニューヨークに移って以降も共演することになる。また学生時代は、同じくバークリーに通っていたジム・ブラックとニューイングランド音楽大学のクリス・スピード、ニューヨークをベースに活動していたアンドリュー・ディアンジェロの前衛ベースレス・グループ「ヒューマン・フィール」に参加している。

2年間の在学後、バークリーの校長、ゲイリー・バートンのグループとポール・モチアンのグループに加入するため自主退学する*2

師事歴
時期 学校・機関 教育家 主な内容
9歳 個人レッスン 不明 クラシックピアノ
高校 フィラデルフィアCPA高校 不明 不明
10代半ば
個人レッスン
Chris MacAlpine ギター
17歳 Jimmy Amadie
ジャズ・ピアノ、ジャズハーモニー
19-20歳 バークリー音楽大学 Edward Tomassi
Chord Scale Voicings for Arranging

カート・ローゼンウィンケル・グループ結成

1992年、ニューヨークのブルックリンに移るとベン・ストリート、ジェフ・バラードと共にギター・トリオを結成。2年後の1994年にはマーク・ターナーをバンドに加えて編成をカルテットに拡張(以降「カート・ローゼンウィンケル・グループ」と呼ぶ)。ターナーとバークリー時代に演奏したことはなかったが、この2人の共演はその後2007年頃まで継続していくことになる。

1994年にはグリニッジ・ヴィレッジで開店したばかりのクラブ「スモールズ」で毎週の演奏を開始する。この定期ライブは5,6年続き、同店の看板バンドとして知られるようになる。またスモールズには上述のバークリー時代の級友に加え、ブラッド・メルドー、ピーター・バーンスタイン、ラリー・ゴールディングス、ジェイソン・リンドナー、アヴィシャイ・コーエンなどニューヨークの音楽大学出身のミュージシャンも出演しており、交流を重ねる。

1996年7月にはスモールズでデビュー作『East Coast Love Affair』を録音。この作品のドラマー、ホルヘ・ロッシーが祖国スペインの新興レーベル、フレッシュ・サウンド・ニュー・タレントのスカウト役を当時務めていたことで実現したものだった。

同年11月、カート・ローゼンウィンケル・グループのサウンドがまとまってきたため、このバンドのスタジオ・アルバムを自主制作する。しかしレコード会社に持ち込んでもリリースにはこぎ着けず、結局カートの家の棚にしまわれてしまう。そんな折、インパルス・レーベルがスモールズに出演しているミュージシャンの演奏をまとめた作品をリースした関係で、カートのグループにも興味を持つ。レーベルとの契約後、インパルスの買収や別の作品のお蔵入りを経験するものの、2000年にはカート・ローゼンウィンケル・グループのデビュー作『Enemies of Energy』を発表。録音から4年越しのリリースとなり、この頃やっと制作時の借金が返せたという。(2002.2, Jazz Life)

『The Next Step』から『The Remedy』まで

その後、2000年には半分の曲を変則チューニングで作曲した『The Next Step』を録音。この作品でマーク・ターナーとのコンビネーション、作曲家・ギタリストとしてのスタイルが認知され、以降ニューヨーク・シーンを超えて影響力を発揮していくようになる。

2001年頃、90年代を代表するヒップホップ・ブループ「ア・トライブ・コールド・クエスト」のメンバー、Qティップをプロデューサーに多重録音作品『Heartcore』の制作を開始する。楽曲を譜面に書かず、全てをソフトウェア上で作曲するというジャズシーンにおけるハードディスクレコーディングのパイオニア的な作品になった。Qティップから提供された膨大なドラム・サンプルやメンバーの生演奏に加え、カート自身がキーボード、ドラム、プログラミングを担当し、様々な試行錯誤のすえ2年半を費やして完成させる。

『Heartcore』発表後、ヴァーヴがカートをプッシュするため次作はオールスター編成に決定する。そこで90年代のポール・モチアン・グループで共演していたジョシュア・レッドマンと、90年代からの友人であるブラッド・メルドーをフロントにしたクインテットを結成。2004年の3週間のヨーロッパ・ツアーの後、スタジオ入りする。

2006年1月にはカート・ローゼンウィンケル・グループの集大成的な作品『The Remedy』をヴィレッジ・ヴァンガードで録音。マーク・ターナー、アーロン・ゴールドバーグ、ジョー・マーティン、エリック・ハーランドが参加し、本作をもってターナーとのコラボレーションに一旦区切りを置く。

スタンダード・トリオ、ニュー・カルテット、カイピ・バンド以降

その後、ジャズ・スタンダードを演奏するギター・トリオ(2009年『Reflections』)、ロック/フュージョン的な色も含んだギター・カルテット(2012年『Star of Jupiter』)、ビッグバンドとの共演(2010年『Our Secret World』)など活動を多面化していく。またアルバム化には至っていないものの、ギターに加えてキーボード、リズム楽器など1人で全ての楽器を同時演奏するソロ・プロジェクトや、ダブル・ギター、ドラムによる変則トリオ「バンディット65」でも活動している。

2017年、10年がかりで制作し、ブラジル音楽にも影響された多重録音アルバム『Caipi』をリリース。同時に作品完成に大きく貢献をしたペドロ・マルチンスやアントニオ・ロウレイロらブラジルの若手ミュージシャンと共に「カイピ・バンド」を結成、世界中を回っている。

備考、エピソード

  • 上述の通り、バークリー時代はほとんど講義に出席せずセッションに明け暮れていた。セッションをする時はショッピングカートにアンプを入れてアンサンブル・ルームに行き、練習室にいるバンドを観察。演奏が良かったら、彼らに仲間入りを願い出ていた。そんな練習を平日には6時間、休日には12時間やっていた。(200?, Berklee Today)
  • 90年代半ば、音楽家としての活動が軌道に乗るまでは、ゲイリー・バートンやポール・モチアンのバンドも辞めたため、家具を売って食費に当てるほど生活に困窮していた。そんな中でも、ジョン・スコフィールド夫妻はカートのアルバムのプロモーションを手伝い、時に自宅へ食事に招いたという。(200?, Berklee Today)
  • マーク・ターナーとはお互いの作品で何度も共演している。ターナーの作品では『Yam Yam』、『In This World』、『Ballad Sessions』、『Dharma Days』に参加しており、『Going to Meet the Man』という企画盤でも共演している。また、シンガー・ソングライター、レベッカ・マーティン(『Once Blue』、『The Growing Season』他)や、ブライアン・ブレイド(『Perceptual』、『Season of Changes』他)、Qティップ(『The Renaissance』、『Kamaal The Abstract』)などの作品にも参加し、活動の幅は多岐にわたる。1997年にはジョン・スコフィールドの推薦でジョー・ヘンダーソンのツアーに参加している。
  • 2003年に妻がスイスの大学に入学するためチューリッヒに移住する。その後2007年に音楽大学からオファーを受け、ドイツ、ベルリンに移住。2017年にハートコア・レーベルを設立するまで、ジャズ・インスティチュート・ベルリンでギターとアンサンブルのクラスを担当していた。

作品

リーダー作

リリース年 タイトル レーベル レビュー
1996 East Coast Love Affair Fresh Sound New Talent
1998 Intuit Criss Cross
Unreleased Under It All
2000 The Enemies of Energy Verve 北澤
2001 The Next Step Verve 北澤
2003 Heartcore Verve 佐藤
2005 Deep Song Verve 北澤
2008 The Remedy: Live at the Village Vanguard Wommusic 北澤
2009 Reflections Wommusic Jazz Guitar Spot
2010 Our Secret World Wommusic
2012 Star of Jupiter Wommusic
2017 Caipi Heartcore 北澤、JGS、吉本

コラボレーション

ヒューマン・フィール
1994 – Scatter
1994 – Welcome To Malpesta
1995 – Speak To It
2007 – Galore
2016 – Party Favor (EP)

サイドマン作品

発言

作曲について①

(パット・メセニー、ジョン・スコフィールドらジャズ・ギターの先人と自分を比べて、悲観的になったことはあるか?と聞かれて)「僕はそれで思い悩んだことはないけど、反面、多くのギタリストはそうした問題を抱えていると思う。僕の個性を確立する上で助けになったのは、いつも作曲をしていたことだ。作曲は僕のスタイルを明確にしてくれた。作曲する時にプランのようなものはない。曲が勝手に出てきて、あるべき形になるだけなんだ*3

だけど、その後僕はその曲の演奏の仕方を学ばなければいけない。僕の書いた曲は、演奏家としての力量を超えたレベルで出てきてしまうからね。だから作曲は僕にとってずっと偉大な教師だったんだ。僕の曲は演奏家として成長させ、スタイルの形成を助けしてくれた。作曲をする時、自分が心の中で聴いたものは、自分の演奏能力に限定されてはならない。もしプレイヤーがそういう風に考えれば、演奏能力にとらわれないで自分ならではの音楽を聴き取れることに気付くんじゃないかな」(Berklee Today: “Did you ever think…abilities on their instrument.”)

作曲について② 

「僕はギターで行き詰まったり演奏がつまらなく感じると、音楽とのつながりをリフレッシュする必要があると考えるんだ。行き詰ったこれまでの方法以外で、(新しい)やり方を見つけようとする。そのやり方なんだけど…これはいつも違っているね。

(半分の曲が変則チューニングで作曲した『The Next Step』(2000)の直前は)自分のやっていたことに飽きてしまって、(自分がギターの)理論的知識の囚人だと感じたことがあった。だから僕はギターのペグを色々回してみて、普段とは違った雰囲気の変則チューニングを色々試したんだ。当然のことながら、それによって僕の持っていた理論上の知識がすべて無慈悲にも消え去ってしまった。慣れ親しんだコードの押さえ方も、決まりきったスケールのフィンガリングも、ルーティンワーク全てが無に帰した。(覚えてきた)ギター理論全てが突然適用されなくなったんだ。(略)

(ハードディスクレコーディングを用いた)アルバム『Heartcore』(2003)の制作プロセスも新しいやり方を見つけようとした事と関係している。(当時僕は)作曲家としてこれまでとは違った作曲法を見つけなければいけないと考えていた。多分座りながらギターやピアノで作曲することに疲れていたんだ。あるいはそれが退屈だと気付き、そうしたアプローチが「サムシング・ニュー」から自分を遠ざけているような気がした。だけど、僕は昔からコンピューターで音楽を作ってきたし、この制作方法を楽しんできた。コンピューターでの作曲はより困難な道だったけど、僕にとっては新鮮なインスピレーションを得る方法になった。

またある時には――ちょうど今(2007年、『The Remedy』『Reflections』の中間のタイミング)のように――純粋なギター演奏以外やらないけど、それも(僕にとっては)新鮮で心地よいものなんだ。だから僕は現在の状態でレコードを作ることができる。純粋なギター演奏は非常に伝統的なものだから、慣れ親しんだ事から逃げようとする試みではない。しかし、少なくとも僕にとってこれは「手垢の付いた音楽」ではないね。

僕は伝統派なんだ。ジャズにおける楽器の伝統的な役割に強度を見出しているという意味でね。(略)そして自分にとってリアルじゃない新規性のために、それを破壊するつもりはない。しかしもちろん、自分自身を制限したくないしこの方向性に定められたコンセプトなんかはない」(2007, Jazzdimensions: Das ist wieder so…dieser Marschrichtung dahinter.)

ギターとピアノ

Q: 色々な音楽にトライする中で、エレキ・ギターに限界を感じることはありますか?
「感じるよ、かなり強力な限界をね。ギターには弦が6本しかないことでかなり制約される。一方、ピアノは88鍵もある。(略)でも、ギターにはメリットもある。限界があるからこそ、メリットも生まれるんだ。限界があると、鍛錬と無駄の無さが必要になってくるから、限られた中で試行錯誤をして、おのずと自分のギター・プレイも成長する。物理的に難しいことがあると、音の選択にも限界が生まれるよね?僕はピアノ的なハーモニーで音楽を考えることがあるけど、それをギターで弾くには、7つほどの音からなる複雑なピアノ・コードの中からもっとも重要な音を3つ4つ見極めて抽出しないといけない。そういったことから無駄のないハーモニーを生み出せるようになるのさ」(2009.5, Guitar magazine)

ヒップホップについて

「ヒップホップにおける多くのハーモニック・モーメントはシェーンベルクの音楽を思い起こさせる。シェーンベルクは演奏のダイナミクスと密接な関係のあるコードを書くんだ。例えば、ストリングスはメゾピアノ、オーボエはメゾフォルテ、ピッコロはピアニッシモ。それらが組み合わさってジャズ・セオリーでは機能することができないハーモニーを作り出している。でも実際は完全にハーモニーとしての役割を果たしているんだ。僕たちは同じようなことをヒップホップのミックスで聴くことができる。そこでは(理論ではなく)耳で聴いたものが全てだ。それがサウンドグッドなら、そのハーモニーは機能しているということさ。このある種のレッスンはジャズミュージシャンにとってはとても重要なものだよ。ジャズの学校の教育法や理論にとらわれないための解毒剤になるんだ」(2003, kurtrosenwinkel.com: A lot of the harmonic moments…theoretical school of jazz.)

好きな音楽

好きな音楽家・作品
時期 音楽家・作品 ジャンル 出典
12歳
ビートルズ『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』 ロック 準備中
WRTI-FM in Philadelphia ラジオ 準備中
10代前半
AC/DC、オジー・オズボーン(特にランディ・ローズ) ヘヴィロック 準備中
ラッシュ プログレッシブ・ロック 準備中
スパイロ・ジャイラ フュージョン 準備中
後期コルトレーン、サン・ラ、スラヴァ・ガネリン フリージャズ 準備中
10代半ば
パット・メセニー、ジョン・スコフィールド、ビル・フリゼール エレクトリック・ジャズ 準備中
ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス アコースティック・ジャズ 準備中
バド・パウエル、チャーリー・パーカー ビバップ 準備中
無人島レコード (2000, Christianrover)
ビートルズ 『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』
デヴィッド・ボウイ 『Ziggy Stardust』
カマロン・デ・ラ・イスラ 『Sampler』
オーネット・コールマン 『Live At Town Hall』
ジョン・コルトレーン 『Coltrane’s Sound』
キース・ジャレット 『Still Life』
バド・パウエル 『Verve Box Set』
セルゲイ・プロコフィエフ 『Piano concerto Nr.3』
モーリス・ラヴェル 『Music For Piano』(played by Monique Haas) 
レッド・ツェッペリン 『Houses of The Holy』
好きなギター作品 (2000, Christianrover)
ポール・デスモンド&ジム・ホール 『Box Set』
ケヴィン・ユーバンクス 『Opening Night』
タル・ファーロウ 『Verve Sampler』
グラント・グリーン 『The Latin Bit』
パット・メセニー 『Rejoicing』、『Offramp』、『Travels』、『Full Circle』
ジョン・スコフィールド 『Blue Matter』
ジョージ・ヴァン・エプス 『Soliloquy』
好きな作品 (2005, Jazz Times)
バスタ・ライムス『Anarchy』、『When Disaster Strikes』
アート・テイタム『Solo Masterpieces』
デューク・エリントン『Far East Suite』
マイルス・デイヴィス『Cookin’ at the Plugged Nickel』
ジョン・コルトレーン『Coltrane’s Sound』
レディオヘッド『Hail to the Thief』の”Scatterbrain”
リヒャルト・シュトラウス”四つの最後の歌”
レッド・ツェッペリン『Houses of the Holy』
ポリス『Synchronicity』
エリック・サティ

影響源

影響源を聞かれて

「基本的に僕はアラン・ホールズワースグラント・グリーンの間にできた息子でありたい。だけどある意味では、コーダルアプローチの点においてキース・ジャレットの息子でもありたい。彼にはソロ演奏の時ですら、ハーモニックな空間を生み出すことのできるピアニスト特有の能力があるからね。もちろん、ホールズワースもまたシングルノートのラインでそういった空間を生み出せるけど、(キースのような)コードとメロディの統合は、僕が今頭のなかで考えていることでもあるんだ。そしてキースはそういうことにおける巨匠だ。バド・パウエル、エルモ・ホープもまたそうだね。だから僕はアラン・ホールズワースととグラント・グリーン、キース・ジャレット、バド・パウエル、エルモ・ホープ的な面を統合しようとしている、ともいえる」(200?, Verve/Jazziz)

パット・メセニー・グループ

「メセニー・グループのレコードには大きな影響を受けた。広大なイマジネーション、ジャズ・グループの可能性に対する野心、作曲的に拡大されたフォーム、全体のサウンドなどにね。楽器を演奏する時のナチュラルなメロディ至上主義にもインスパイアされた。オーネット・コールマンの演奏にも彼と似たナチュラリズムを認めることができる。パットはオーネットにダイレクトに影響されていると思うけど、メロディーにアプローチする方法において、この2人にはより本質的な共通性があるんじゃないかな。パットはレコードを作るときはとても入念な職人であるがゆえに、今の彼の作品での演奏は、やや定型化されたものに感じる。だけど彼のライブを見た時には、よりメロディー的な自由さを感じた。また、(メセニー・グループ以外では)『Rejoicing』は最も素晴らしいギタートリオ作品のひとつだ」(2008, Jazz.com: Pat Metheny Group records were…guitar trio records ever.)

アラン・ホールズワース

「ホールズワースもまた大きな影響源であり、それは今も変わらない。その音楽と言語は、彼がボキャブラリーやラインという点で、ジョン・コルトレーンの世界に本当に順応して、そこに住んでいるギタリストだということと深く関係している。僕にとって彼は、コルトレーンの世界に触れたことがある唯一のギタリストだ」(2008, Jazz.com)

セロニアス・モンク

「トラディショナルなものからコンテンポラリーなものへの架け橋を担った、重要なミュージシャン。特に作曲の面でね。彼の作った曲はコード進行ひとつを取っても予測できないものが多いし、サイズも8小節単位ではなかったり、1コーラスが32小節になっていない曲もあったりと、実にユニークだ。コード進行やハーモニーがどのような構造をしているかなど、ずいぶん勉強した。また、モンクの曲をモンク自身が演るように、僕がプレイするには一体どのように演奏したらいいのかということも、かなり研究したね」(2009.12, Jazz Life)

ジョン・コルトレーン

「10代の頃にコルトレーンを聴いた時は苦悩といった類の印象で、色で表すならばたとえば(イギリスの画家)ターナーの絵のようなダークな色彩だった。でも、今の僕にとって彼の音楽はさんさんと輝く太陽だったり、天使が舞っているような明るい印象なんだ」(2009.12, Jazz Life)

2000年『The Enemies of Energies』日本盤ライナーノート
パット・メセニー、ジョン・スコフィールド、ジョン・コルトレーン、エルモ・ホープ、タル・ファーロウ、(ギターによるピアノ的なアプローチとして)ジョージ・ヴァン・エプス
2005, Jazz Times 影響を受けたクラシック音楽
チャールズ・アイヴズ『Central Park in the Dark』
モーリス・ラヴェル
アルノルト・シェーンベルク『Five Pieces for Orchestra』
2008, Jazz.com
キース・ジャレット・アメリカン・カルテット
デューク・エリントン、特に『the Far East Suite』、『His Mother Called Him Bill』、『Afro-Bossa』などの60年代作品。
オーネット・コールマン『Live at Town Hall』
マイルス・デイヴィス『Live at the Plugged Nickel』
エルモ・ホープ『Homecoming』
ケヴィン・ユーバンクス(ギタリストとしては影響を受けなかったが彼の楽曲には何度もインスパイアされた。特に『Opening Night』という作品は10代からのお気に入り)
パット・メセニー・グループ
アラン・ホールズワース
タル・ファーロウ
ジョージ・ヴァン・エプス
初期のビル・フリゼールとジョン・スコフィールド
ロック・ギタリストではアレックス・ライフソン、ジミー・ペイジ
2009.5, Guitar magazine
デューク・エリントン、ジョン・コルトレーン、バド・パウエル、アラン・ホールズワース、グラント・グリーン、タル・ファーロウ、ブッカー・リトル、キース・ジャレット
2011年 JazzReview
ギタリストではジョージ・ヴァン・エプス、アラン・ホールズワース、グラント・グリーン、ケヴィン・ユーバンクス、パット・メセニー、ビル・フリゼール、ジョン・スコフィールド、タル・ファーロウ、ジミー・ペイジ、ジミ・ヘンドリックス、ジム・ホール

ギタリスト以外ではマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、キース・ジャレット、バド・パウエル、エルモ・ホープ、ジョー・ヘンダーソン、ビートルズ、デューク・エリントン、エリック・ドルフィー、ブッカー・リトル、マックス・ローチ、ボビー・ハッチャーソン、ウェイン・ショーター、ウィントン・ケリー、アーマッド・ジャマル、レニー・トリスターノ、アルノルト・シェーンベルク、アンリ・デュティユー、セルゲイ・プロコフィエフ、モーリス・ラヴェル、クロード・ドビュッシー、フランク・シナトラ

2017.3 Jazz Life 影響を受けたブラジル音楽

ボサ・ノヴァやブラジル音楽はずっと以前から好きだった。アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトは素晴らしいミュージシャンだし、僕自身ボサ・ノバを演奏することも大好きだ。とてもリリカルでメロディックなサウンド。その上、とてもハーモニックだ。それらが合わさってとてもソフィスティケイトされた音楽を作り出している。現代の音楽家ではミルトン・ナシメントが大好き。彼の音楽は、僕にとても大きな感銘を与えてくれる。

他のミュージシャンについて

マーク・ターナー

(音楽的に共通している部分をおしえてほしいといわれて)「音楽的な共通点といっても、ありすぎて1つや2つにまとめられないよ。1つだけいえることがあるとすれば、この関係は言葉にできるようなシンプルなものではないということ。彼の耳には何が聴こえているか、僕にはわかるんだ。それぐらい近い感覚を持っているということさ」(2003.10, Jazz Life)

Qティップ

「彼は音楽的にとても幅広い感性の持ち主で、ヒップホップ・アーティストとして知られているけど、ジャズへの造詣も深い。僕は彼のこれまでの作品も大好きで、『Amplified』はフェイヴァリットの1枚だ。僕らはふたりとも揃って1970年生まれで、音楽以外でもとても近い価値観や視点を持っている」(2003.10, Jazz Life)

ペドロ・マルチンス

「僕と彼はとても不思議な縁で結ばれている。そもそものきっかけは、8年前(2009年頃)に僕がリオデジャネイロに作詞家を探しに出掛けた時のこと。”カイピ”プロジェクトのデモ演奏数曲を関係者に渡してそのまま帰国したんだけれど、当時15歳のペドロがその音源のコピーを偶然手に入れ、そこに収められていた音楽に触発されて、何度も繰り返して聴きながらアーティストとして成長していったということなんだ。そして、その8年後に僕は彼と初めて会うことになる。初めて会ったのに、彼は僕がまだ発表もしていない曲を知っていて、とてもショッキングな体験だった(笑)。ペドロはとてもアメイジング!演奏家としても作曲家としてもずば抜けた才能の持ち主た」(2017.3, Jazz Life)

評価

ポール・モチアン

「彼はまだとても若くて、ときとしてあまり良くないと思えることもあった。何か、実験的なことをやっているように思えたんだ。でも、彼が挑んでいた新しいアイディアは気に入っていた。それが僕の意見と必ずしも合うとは限らなかったけど、これまでとは違った新しいことをやろうとするその姿勢は気に入っていた」(Jazz Guitar Book 29)

ヤコブ・ブロ

「彼は今まで誰もギターで実現できなかったことを可能にした。カートについて僕がもっとも感心していることは、彼の音楽はかなり複雑なのにいつもメロディを失わないこと、まるで心の底から自然に湧き出た音楽のように聞こえることだ」(2014, Jazz Tokyo)

レベッカ・マーティン

「カートの弾くギターがまたギターっぽくない音色を出すでしょ。まるでスタジオに幽霊がいるみたいで。ほかとは代えがたい、独特の雰囲気がある」(2009.5, CD Journal)

イーサン・アイヴァーソン

「カートが21世紀の新しい音楽の革新者として名高いのは、まったく正当なことといっていい。僕らの世代のあらゆるミュージシャンは、マーク・ターナー、ベン・ストリート、ジェフ・バラードを従えたカルテットでカートが自作曲を演奏するのを、スモールズで毎週のように聴いて育ったものだ。口ずさめるメロディ、濃密なリズム、みなぎるヴァイブ。僕自身だけでなく多くの仲間が、この頃の演奏には大きな影響を受けた」(『Reflections』 ライナーノート)

石沢功治(ライター、アナリスト)

プレイはレガート奏法主体だが、アラン・ホールズワースのようにワイド・ストレッチは多用しない。代わってポジション移動のスピードは群を抜く。速弾きしているにもかかわらず、そう感じさせないのは、リヴァーブの上にさらにリヴァーブを鬼ごっこのようにかけた独特な空間作りのお陰。コンディミやトライアドを駆使したフレーズは現在のNY系ギタリストの座標となっている」(ジャズギター・スタイルブック)

機材

時期・作品 ギター 出典
学生時代~East Coast Love Affair Yamaha SA 2100
2000, Christianrover
Enemies of Energy
Intuit
Perception(ブライアン・ブレイド)
Ballads(マーク・ターナー)
Gibson 355
I wish I Knew(クリス・チーク) Gibson TD 125、Gretsch Tennessee Model
2000年 Epiphone Emperor
弦: D’Addario .13s.
ピック: Dunlop Jazztone 207
2005年 D’Angelico New Yorker NYSS-3
弦: D’Addario .13s.
アンプ: Polytone Minibrute 3
エフェクター: Line 6 delay modeler, Lexicon LXP-1
2005, JazzTimes

出典

雑誌

(2000.2) Jazz Life by 工藤由美
(2009.5) Guitar Magazine
(2009.5) CD Journal by 真保みゆき
(2009.12) Jazz Life by 石沢功治
(2011) Jazz Guitar Book 29 by 石沢功治
(2013) NEW YORK ジャズギター・スタイルブック by 石沢功治
(2017.3) Jazz Life by 早田和音

ウェブサイト

(200?) Verve
(200?) Berklee Today by Mark Small
(2000) Christianrover
(2003) Kurtrosenwinkel.com
(2005) All About Jazz by John Kelman 
(2005) JazzTimes by David R. Adler
(2007) Jazzdimensions by Carina Prange
(2008) jazz.com by Ted Panken
(2008) State of Mind Music by Mike McKinley
(2009) All About Jazz by Franz Matzner
(2011) JazzReview by Fred Gerantab

おすすめ作品

  1. Philadelphia High School for the Creative and Performing Arts。
  2. 前者には1991-92年、後者には1992-94年の間在籍する。モチアンのグループはビル・フリゼールの推薦だった。
  3. The songs come out and are what they are.